マドリード(Madrid)近郊 ―ラマンチャ(La Mancha)地方の諸処―


Madridは,実はダミーに近くて,Mad市内は半日程度でお茶を濁します. Madに滞在する数日間は,Madを起点にtour客がほとんど行かないMadの南〜南東郊外(といっても,200〜300km,車で高速を2〜3時間)であるLa Mancha(ラマンチャ)地方の隠れ(てもいませんが,行きにくいので団体さんや観光客はいない)町村を,自然遺産を中心に,毎日日帰りで連チャンします.ハイヤーをあらかじめ手配してあります.車はBMWで,運転手は3日間通しでアントニオさんです.

(1) ホルケーラ(Jorquera)
途中,Mota del Cuervo(モタデクエルボ)で風車見物. 太古の昔に,ラマンチャ地方の乾いた大地と平原を流れる源流が,蛇行する川の流れに沿って平原を浸食して行きます.川が囲んだ川岸の村を丸〜く残すように川が浸食によって沈み込みます.浸食された周りの川だけが沈降して行き,その川に囲まれた岩山の頂上の村だけが天空に取り残されたのが,天空の村ホルケーラです.(写真:天空の村ホルケーラ)
ホルケーラの中でも,その一角であるAlcala del Jucal(アルカラデルフーカル)地区(村)は,廻りを深い川谷の絶壁で削り取られた完全プリン型の陸の孤島になりました.まあ,実は,この天空の村の奇景は,村に入ってしまうのではなく対岸からでなくては見られません.(写真:アルカラデルフーカルの奇観)
また,途中のモタデクエルボという小高い丘に何機も立つ今は朽ち果てた風車(10m位の高さ)を見ると,小説とはいえ,ドンキホーテの世界に浸れます.
現代の風車発電用の何十mもの高さに巨大な金属製の三枚羽根がある風車に比べると,地上すれすれで直径が数mで木の4枚羽根の風車の形骸は,オランダから移住してきた農夫がラマンチャ地方のからっ風を利用するための農器具でした.
Spain小説中で,現実との区別が付かなくなったラマンチャの騎士ドンキホーテはこの風車が怪獣か武器に見えたのでしょうか,「やあやあ,我こそは勇猛な騎士ぞ,勝負せい」と突っ込んだそうな.事実は小説よりも奇なりか.

(2) アランフェス(Aranjuez)
荒地がほとんどのラマンチャで,川(タホ川という)が流れるアランフェスという緑地は,王族達の別荘地として栄えたそうです.
王宮(の庭園)は広く静かで美しい.当時のゆったりと過ぎゆく時間を忍ばせてくれます.車もそんなに走っていないし.高い建物は王宮や(凱旋?)門で,平面的な碁盤の目状(←極小の京都だ)の実に美しい古街でした.
この旅では,石の壁に取り囲まれた路地が中心だったけれども,アランフェスは,街路が地面にへばりついたような空間にたたずみ,空がだだっ広い(この旅唯一の)平面空間の瀟洒(しょうしゃ)な街でした.

(3) チンチェン(Chinchon)
一方,チンチェンは,闘牛場が町内の社交場(集会場,公民館)の石の街です.
マイヨール広場(←どこにでもある,「市民広場(?)」て言う意味か)という手製の闘牛場を西部劇でよく見る木製のテラスのまあるい長屋が囲み,そこを底にして同心円状に石並みの狭い街路の迷路が取り囲んでいます.
立体的な石の街ですが,何かそれまでに見ていた石の街路が入り組んでいる街とは異なる雰囲気があるのは,下に向かって行けば,必ず底にあたる広場に出られる安心感でしょうか.
石を敷き詰めた路や石で囲んだ壁の街は住人の気配がなくて,静謐(せいひつ)が漂っている.木造りの家はopenで家の雰囲気が周りに漂い出ているが,Spainの頑強な石造りの家は住人の気配を消している.何を生業にして暮らしているのだろうか,子ども達も居るはずなのに.石の家には,老人達しか住んでいないような錯覚を覚える.

(4) カンポデクリプターナ(Campo de Criptana)
カンポデクリプターナの風車は,(1)でのモタデクエルボの一回り大きい(=風車の数が多い)版.ラマンチャを目に焼き付けて,ドンキホーテになる.(写真:カンポデクリプターナの風車群)

(5) クエンカ(Cuenca)
クエンカは,(1)のアルカラデフーカルを1教会に限った(=川にせせり出た絶壁に教会がへばりついている)絶壁街です.川の浸食が作った自然の絶壁にへばりついている石積みの立体的でバベルの塔いや街/村です.


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