まえがき

私たちが生活するためになくてはならない道具になったコンピュータ(computer)は,実は,高度な計算や情報処理を行う「システム(system)」である.「コンビュータシステム(computersystem)」は,主に計算や処理の速さを左右する「ハードウェア(hardware)」と,活用場所や適用範囲の拡大を図る「ソフトウェア(software)」との2つの機能を組み合わせて構成する.ハードウェアとソフトウェアのいずれが欠けてもコンピュータシステムは構成できないし,また,両者が組み合わされ,協調してそれぞれの役割を果たしてこそ,「システム」として成立する.
本書では,このコンピュータシステムを支える2つの機能のうち,「ハードウェア」に焦点をあてて,それがコンピュータシステムの中で果たしている基本的な役割について説明する.本書は,単なるハードウェア装置の概説ではなく,コンピュータシステムを横成するハードウェア部品としての役割,および,システムを構成する上でのハードウェア機能とソフトウェア機能との関わり合い,のそれぞれについて明らかにすることを狙っている.
本書では,まず,コンピュータシステムからハードウェアおよびソフトウェアへ,ハードウェアから内部装置(本体)および外部装置(周辺装置)へ,そして,内部装置からプロセッサおよびメモリへ,プロセッサから演算器および制御機構へ,さらには,演算器から論理回路および論理素子へと,類書とは逆に,トップダウン(top−down; 上から下へ,ただ,本書では「外から内へ」の方がぴったりの語感である)に説明を展開する.これは,読者の身近にあって,読者が意識するしないにかかわらず始終接している「コンビュ−タシステム」から学習し始めることで,専門知識へのとっつきやすさを狙ったからである.「コンピュータシステム」というブラックボックス(blackbox;中身が見えない箱)の殻を1枚1枚外から内へはがして行くことで,自然と「ハードウェア」に関する基礎知識が身につくようにしてある.
さらに,身近にある「たとえ話」を節の切れ目に挿入することによって,「私たち人間(社会)とコンピュータとの類似と相違」という直観的な理解に訴えている.これらのたとえ話は,「閑話休題」として,学習の息抜きに使ってもらえればよい.たとえ話によって,「人間が作ったコンピュータは人間や社会との類似点をたくさん持っている」ことを知ってほしい.
本書は「コンピュータリテラシ(computer literacy;コンビュータを使いこなすための知識)」や「情報リテラシ(情報活用能力)」の中心となる「ハードウェア」についての入門書である.そのために,本書1冊で完備した構成としてあるので,専門的な知識をまったく持っていない読者でも本書による学習を十分に遂行できる.

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